2010年11月のプチ日記

11月30日(火曜) 深夜

 今年もボジョレ・ヌーボーの季節となりましたですね。

 ボジョレ・ヌーボーにたいした思い入れは持ってないので、今年の出来がどうなのかも頓着していないのだけれど、せっかくなので(今さらながら)調べてみたら、2010年は「昨年並みの出来」とのこと。昨年が「50年に一度の出来」だったことを考えると、そりゃあさぞかし素晴らしいのだろう。

 ここ10年くらいの間に、10年に一度どころか、100年に一度とか、50年に一度とかいった上出来ボジョレが何度も登場しているような気がする。一見するとおかしいように思えるけれど、統計学的にはべつに間違っていない。百分の一の確率で当選するクジを3回連続で当てる可能性がゼロではないのと同じことで、言ってみれば確率を「先食い」しているわけだ。

 ボジョレ業界の人たちも「今年さえ売れればそれでいい」という気持ちと、「でも後輩たちのことも考えてやらなきゃ」という気持ちとの葛藤の末、本年度の出来ばえを決めているんじゃないだろうか。

 でも、たとえ「史上初で史上最後の出来映え!」とか銘打っても、実は全然問題ないのだからいいですな。年度ごとにちょっとずつ味は違うんだろうから、どの年度も「史上初で史上最後」の出来映えということになる。「史上最高の出来映え」と銘打ったところで、それを毎年更新すればいいだけの話で、実際テレビとかの家電新製品は常に「史上最高の品質」を更新し続けているんだし。

 ただ、「これ以上の出来映えは今後100年はありえない」式の、未来に対する言及だけは禁じ手でありましょうか。

 

11月29日(月曜) 深夜

 物知りな人のことを「歩く百科事典」などと言って敬うことがありますが。

 百科事典の情報量なんて、せいぜいCD−ROM数枚ぶん程度。われわれの脳みそに蓄えられている莫大な情報量に比べたら、それこそ屁みたいなものである。CD−ROM数枚ぶんで敬われるなら、こんなに割のいい話はない。

 記憶はざっくり分けると、「エピソード記憶」(経験)と「意味記憶」(知識)とに大別される。たとえば、北海道を一周した旅の思い出なんかはエピソード記憶で、高校時代に学んだ物理の数式なんかは意味記憶ということになる。

 世間一般では、意味記憶をたくさん貯蔵している人が「物知り」として尊敬される傾向があるけれど、それよりもエピソード記憶が豊富か否かのほうが、ずっとずっと大きく情報量を左右しているんではないかと思う。実際に目で見て、耳で聞き、肌で触れ、においを嗅いだ実体験と、文字だけの教科書から学んだ知識とでは、情報量の違いは圧倒的だろう。ちんけで貧相なバーチャルリアリティを構築するだけでも、CD−ROMでは追いつかないくらい莫大なデータが必要になるんだから。

 それに、われわれが限られた文字情報(メールとか)によっていろんな想像をしたり、心を動かされたりするのは、その文字情報をきっかけに自身のエピソード記憶がよみがえるからである。たとえば「なんだかウンコみたいなにおいがします」という、たった十数文字のテキストを読んだだけで鼻をつまみたくなるのは、決してテキスト単独のおかげではなく、今までに見て嗅いださまざまなウンコのエピソード記憶が喚起されるからだろう。

 それがどうした、だから何なんだという話ではあるんですが、ふと思ったので書いてみました。すみません。

−−−

 この日記には蕎麦のことをあまり書かないせいで、蕎麦好きではないと勘違いされそうで恐くなってきたので、そろそろ書いておきます。

 …というわけで、蕎麦を食べました。四条寺町を数十メートル下がったところにある「永正亭」にて。

一見すると高級な蕎麦屋みたいですが、ちっともそうではありません。それにしてもこの写真、我ながら上手に撮れました。 店の持つ落ち着いた佇まいを見事に引き出した、このまま雑誌に載せられそうな一枚です。
 
蕎麦は手打ちで、出汁もちゃんと自分でとっておられて、このお値段。 もちろんちゃんと美味しいのだからたまりません。これで「美味しいけど値段がちょっと高いね…」と言う人に、今まで出会ったことがありません。
 
とりわけ気に入りの「特田舎そば」。これだけ入って550円! 天かす、刻み海苔、大根おろし、刻みネギ、卵黄がトッピングされてます。一気にかき混ぜてから食べる猛者もいるようですが、ぼくは「天かす風味ゾーン」「大根おろし風味ゾーン」……と食べ進み、最後に卵黄をぐちゃっとつぶして汁ごとすすり込むのが常です。

 

11月26日(金曜) 深夜

 パソコンで文書を作っていた同僚Aさんが、隣でとつぜん叫んだのでした。

 「もうーっ! このパソコン、ほんま頭悪いんやから!!」

 いったいどうしたのか訊いてみると、「原因」という単語を漢字変換しようとしても変換されないとのこと。

 たしかに、こんなポピュラーな単語が変換されないとしたら、相当に出来の悪いパソコンというか、もはやバグの領域である。まさかこんなことがあろうとは…と訝りながら、自分のパソコンで試してみたら、ちゃんと 一発で「原因」に変換される。あれ? 同じ Windows XP マシンなのにどういうこと!?

 ワケが分からないままAさんのパソコンを見にいったところ、ああそういうことですかと納得した。Aさんは「原因」を「げいいん」と入力していて、当然のことながら「鯨飲」しか変換候補にあがってこなかったという次第。

 思わず「頭悪いのはパソコンじゃくて、アナタですよ!」と口にしそうになって、あわてて言葉を飲みこみました。相手の無知を嘲笑したら、けっきょく自分が損するということを、今までに何度も経験してきたから。

 そんなわけで自分の損得を計算した末、Aさんにはつとめて暖かく言い添えておいたのでした。

 「あー、パソコンもまったく気が利きませんねぇ。いや、これ、『げんいん』だと変換されるんですけどね。パソコンは融通がききませんから」

 Aさんも「そうやんねー。やっぱパソコンって馬鹿やんねー」とおっしゃってました。

 うん、これでいいのだ。性格も悪くなりすぎると、一周して「いい人」になってくる昨今です。

 

11月25日(木曜) 夜

 職場のトイレで普通にうんこし終えて。

 さあ個室から出ようとしたら、ドアの向こうに、誰かは分からないが同僚の男性らしき気配がした。

 いま個室から出たら彼らと鉢合わせ、真っ昼間からうんこしていたことがバレバレではないか。いやまァ、真っ昼間からうんこしたって全然かまわないのだけれど、小学生時代からの負の遺産というか、やはり何となく気恥ずかしい。

 …というわけで数秒のあいだ逡巡した後、ここはひとつ「やりすごす」ことにしたわけですが。

 2分待てども3分待てども敵はトイレから出て行かない。なんぼほど長いおしっこなんじゃい! と内心ブチ切れながら、ちゃんとズボンまで穿いた態勢のまま個室で息をひそめ続けるも、奴は出ていく気配すら感じさせない。そしてそのまま4分、5分と経過して。

 いったいどうなってんだ?? このまま突撃(?)するしかないのか!? …とドアノブに手をかけたところで、ドアの向こうから舌打ちとかすかな独り言が。

 「チッ! まだかよ……

 相手もうんこしたくて、ぼくが出るのを待っていたのだった。

 ああ申し訳ない! でも君の独り言がなかったら、さらなる泥沼の持久戦に突入するところだったよ!!

 そんなこんなで、なんとも気まずい雰囲気を打破すべく威勢よくバーンッ! とドアを開けると、そこには他部署の後輩君の姿が。

 「あ、名倉さんでしたか」
 「ごめん、ちょっと便秘で長くなって」

 こうしてお互い、日常の仕事へと戻っていったのでした。これでよかったのか悪かったのか分かりませんが、よかったことにしたいと思います。

 

11月24日(水曜) 深夜

 ちょっと前にタバコが増税で値上がりしましたですが。

 これを機に減煙、禁煙! と張り切っている同僚が何人もいるのを尻目に、ぼくなどは値上げ以降、むしろ喫煙量が増えています。

 なんとなれば、もともと普段は1日4本と決めているんですが(朝、仕事の後、夕食の後、寝る前の4本)、1本あたりの値段が高くなったと思うとなんとなく惜しくて 、同じ4本でもひとつひとつ根元まで吸ってしまうから。

 タバコ増税は国民の健康のためと言われても、ちっとも納得できません。自分の貧乏性のせいではあるんですが。

 

11月23日(火曜) 夜

 先日お祭りになったダスターの件ですが。

 意を決してスーパーの店員さんに尋ねてみたところ、「事務部のほうで仕入れたものが届いているだけなので、分かりません」と冷たくあしらわれてしまいました。そりゃそうか。

 教えていただいた商品の中から自分なりに選んで購入してみたいと思います。

−−−

 そして本日、とうとう買ってしまいました。フィスラーのフライパン、1万6千円くらいなり。

 さっそく手始めにチキンソテーを作ってみたところ、たまげました。表面カリッカリ、中身ジュッワー。グラム78円で特売されていた鶏肉なのに。

 こんなに上手に作れるなんて自分でも思ってなかったので、やはり優れた調理道具の威力を思い知らされます。猫に小判という気がしないでもないですが、それよりも腕のマズさを道具でカバーしてくれるほうがずっと大きい。

 そして、既にいくつもフライパンを持っているにもかかわらず、新しいのを買ってしまった罪悪感を払拭しようと、自分への言い訳ばかり重ねてます。

 その一方でデジカメ買ったり、これまた既に持ってるのに包丁買ったりしていることは、一時的に「ない」ことになってるんですが。

−−−

 ちなみに今回買ったフライパンはこちら。

 

アフィリエイトになってて阿漕ですが、そこらの安いフライパンに比べると歴然の差。きっと料理の腕があがると思いますので、よろしければ。

 

11月22日(月曜) 夜

 近所のゴミ置き場に、さらなる変化が。

今年10月上旬。まだ「〜捨てないで下さい!」と、なんとか敬語口調です。
 
今年10月下旬。 だんだんエスカレートして、「恥をしれ」だの「ボンクラ、カスじゃ!」だの、ひとり炎上状態に。
 
そして今年11月中旬。いくら恫喝してもムダと悟ったのか、お花+ペットボトルという懐柔策に。でも、どうしても一言いい添えたかったのか、「するなさせるな不法投棄」と、今度は標語調になりました。

−−−

 あと、どうということのない近況でも。

奮発して巨大なカニを買いました。大きすぎて写真に入りきらないくらいです。
 
素敵な名前のマンション。ここの住んだら、吐いて吐いて、吐きまくれ!!
 
巨大カニの全貌です。あまりのデカさに、しばし茫然。

 

11月19日(金曜) 深夜

 先日、先々日の日記で取り上げたダスターについて、さらなる追加情報をいただきました。笑。

−−−

【さかた様より】

件のダスターについて、私も思うところあり、メールさせていただきました。

それは、クラレのカウンタークロスではないかと思います。

なぜなら、私が働いている喫茶店(珈琲館)で業務用ダスターとして使用しているものがそれで、同じだからです。色は青、白、緑、ピンクがあります。

http://www.seiketu.co.jp/souji/item/13357-001.htm(一例)

よろしければ参考までにどうぞ。

−−−

【清水様より】

それって、業務用ふきんカウンタークロスってヤツだと思うんです。
私も愛用してるんで。
ココ結構安く買えます、大量になっちゃうけど。
 ↓
http://www.asmaru.com/search_result/?q=カウンタークロス&s=3&sd=1&displaytype=0

お節介ですみません。
お役に立てれば幸いです。

−−−

 いただいた情報をもとにいろいろ見ているうちに、正式名称が分かりました。カウンタークロスって言うんですね。

 とりあえず近日中にスーパーで聞いてみます。これ以上は情報をいただいても混乱するので、ご容赦くださいませ。

 いやーしかし、ダスターでこんなに盛り上がる(?)とは自分でも思ってませんでした。ダスター祭り! いや、カウンタークロス祭り!!

 関係ないですが、先日見かけたお祭りです。

 足腰でもお祭りになるんだから、そりゃあダスターも祭りにくらいなりますわ。

 

11月18日(木曜) 深夜

 下の日記で取り上げたダスターについて、何名かの方からご教示のメールをいただきました。本当にありがとうございます。

 よーし、これでとうとう念願のダスターが手に入る!! …と思ったのも束の間、いただいたメールを拝見してみると、それぞれに違う商品だったりして、ああダスターとはこんなに奥の深い世界だったのかと、改めて畏敬の念を抱いております。

 せっかくなので、いただいたメールの一部を引用してみます。

−−−

【S様より】

名倉様

http://www.amazon.co.jp/ワイズ-TT-013-不織布ふきん-テーブル用-3枚入/dp/B003922RK2
お探しのものはこれではないかと思います。


いつも楽しく拝読しています。
お探しの布巾ですが、「不織布」「ふきん」で検索するとお好みのものが見つかると思います。

−−−

【A様より】

探しておられるダスターですが、これではないでしょうか。
http://www.ho-zai.com/item.php?cmd=detail&item_id=444
30枚ワンセットで送料が525円なのでご注意を

使用素材 : 極細繊維乾式不織布(ポリエステル65%:ナイロン35%)って事
なので同等品が100均一で売ってそうですね。

−−−

【E様より】

http://www.bidders.co.jp/dap/sv/nor1?id=130232179&p=y%23body
これ?

−−−

【a様より】

ナグラ様

11月16日の日記にてダスターのことが書かれており
ダスター愛好者の私としてはいてもたってもいられずメール差し上げた次第です。

あれはカウンタークロスが正式名称かと思います。
今ならamazonで100枚1,750円となっております。

ちなみに私はダスターならピンク派です。

http://www.amazon.co.jp/オールタイム-カウンタークロス-100枚/dp/B0016ANR0S

−−−

【M様より】

11/16の日記を見まして今回メールします。

お探しのダスターは丸善化工の不織布ワイパーで、「タフ」という商品ではないでしょうか(違っていたらすみません)
業務用商品なので一般のお店では入手しにくいと思いますが、楽天市場でみかけましたのでリンクを貼ります

http://item.rakuten.co.jp/fujinami/451990970504700/

−−−

 見れば見るほど、どれもが憧れのダスターに見えてきて、でも、これだ! という決め手もなく。これだけ奥の深いラインナップの中からダスター初心者が所望のものを選び当てるなど、しょせんは雲をつかむような話だったのだなァと茫然としていたところ、こんなメールをいただきました。

−−−
 

【Y様より】

名倉 様
 
こんばんは。
 
「ダスター」の件、そのスーパーの店員さんに聞いてみるのはダメなのでしょうか?
 
「どうしてもこれと同じものが欲しい」と言えば、たとえそのスーパーで売っていなくても、 
備品を譲ってもらえるかもしれません。(上手くいけばタダで貰えるかも・・・)
 
以前、スーパーでバイトをしていましたが、いろんな無茶を言ってくるお客さんは結構いました。
 
ダメ元で試してみてはいかがでしょうか。

−−−

 …確かにその通りかもしれません。今度がんばって、スーパーの店員さんに訊いてみた結果を、ここにレポートしたいと思います。

 

11月16日(火曜) 深夜

 スーパーの荷物棚(?)においてある不織布がほしくてたまらない。

 どうしてこんなモノがほしいかというと、学生時代にバイトしていた飲食店でこれと同じものを使っていて、すこぶる使い心地がよかったから。当時は「ダスター」と呼んでいて、その使い心地が当たり前だと思っていたけれど、後になってみると同じものは手に入らず、ああ、あのダスターは貴重な存在だったのだと、いまさらながら想いを馳せている次第でありまして。

…と言ってもきっと伝わらないと思うので、スーパーで写真を撮ってきました。店員からは「なに撮ってんの?」という怪訝な顔をされながら。

あこがれのダスター

 このダスターがほんと使いやすくて。適度のかたさとボリュームがあって吸水性バチグンながらも、しぼると水切れがよく、おまけに耐久性も高い。あまりにも思慕の念が募りすぎて、似たような商品を探して買い求めてみたのだが、どうも使い勝手が違う。柔らかすぎてすぐにモケモケになってしまうから、がんがん使えないんである。

哀しみの類似品たち

 先日の朝などは、あこがれの「ダスター」がロールで販売されていて大興奮している…という夢で目覚めました。どこに売ってるのかご存知の方がおられましたら、メールでお知らせいただけると飛び上がるほど嬉しいです。

 こうなったら、サンタさんにお願いするしかないんだろうか。

 

11月15日(月曜) 深夜

 庖丁・料理道具の老舗「有次」、店長さんのインタビューより抜粋。

(有次さんって創業1560年になるんですよね。これだけ長きにわたって商売を続けられる「秘訣」を伺ってもいいですか?)
「秘訣なんてないですなァ(笑)。そやねえ……ただ、職人としていつも肝に銘じてることはあります」
(と言いますと?)
「手前どもは毎日、いくつもいくつも庖丁作って研いで……の繰り返しです。そやけど、そのひとつひとつが、お客様にとっては一生モノなんやって」
(ひとつひとつ一生モノだという気概をもって庖丁作りに向き合っておられるんですね)
「先日も庖丁をご購入くださったとあるお客様からクレームがついたんです。買った庖丁から変な音がするから交換してくれへんか? って」
(へえー。庖丁から変な音、ですか)
「そんなん前代未聞ですし、最初は怪訝に思いましたよ。それこそ、なんのこっちゃ!? ってね(笑)」
(そうですよねえ。庖丁から音がするなんて、私も聞いたことないです)
「でもね、そのお客様はいたって真剣ですし、庖丁を上下に振ると音がするとおっしゃるんですわ」
(ええ、ええ)
「それで、わたしも店頭で庖丁振ってみたんやけど、全然聞こえへんのです(笑)」
(アハハ、やっぱり音なんてするわけないですよね)
「いや、それがね。お客様がおっしゃるには、小さな音やから騒々しい店頭では聞こえへん、もっと静かなとこで確かめてほしいと」
(なかなか頑固なお客さんですねえ)
「それで店の裏の事務室に行って確かめてみたんです。そしたら確かに聞こえる。耳元で振ると、かすかーに、鉄粉が飛んでるような音がする」
(えっ、ほんとに音がしたんですか!)
「まァ、音って言っても、耳をすまして聞こえるか聞こえへんかくらいのもんですよ」
(なるほど)
「溶接したときの鉄粉がハンドル部分の中空構造のなかにはがれ落ちたんかなァと思いますけど、もちろん切れ味にはまったく影響ありません」
(そうですよねえ)
「そやけど、そのお客様にはすぐ、新しい庖丁と交換させていただきました」
(わー、太っ腹ですね!!)
「お客様が気になさっているなら、どんなことであってもそれは大きな問題なんです。その庖丁を一生使っていただくわけですから」
(な、なるほどー)
「そやからこそ、手前どももひとつひとつ真剣に作らざるを得ない。正直、こんなかすかな音くらいで……って思わんでもないですよ(笑)」
(そりゃそうですよ。笑)
「でも、それを切り捨ててしまうと、大切なもんを捨ててしまうことになる。弊社の庖丁にお客様がずーっと不満を持ったまま過ごされることになる」
(奥が深いですね)
「ウチが長いこと商売させてもらってるのは、たぶんこういうことの積み重ねやと思うんです。ま、さっきのはちょっと極端な例ですけど(笑)」

 …念のために申し添えると、上述のインタビューはウソというか、単なる捏造ですので。

 あと、お察しの向きも多いかもしれませんが、庖丁から音がするなんていう信じがたいクレームをつけたのはぼくです。

 こんなしょうもないことで庖丁を交換してもらったことへの罪悪感にさいなまれた末、こんな風だったらいなァと都合よく妄想していたことを明文化してみました。我ながら心底もっさり千万です。

 

11月12日(金曜) 深夜

 そういや、京都・伏見から淡路島へと移転したラーメン屋「はなふく」に行ったのを書き忘れてました。

◆開店3日目にして、既にこの行列。並んでいるのは地元の人たちで、おいしいラーメン屋がオープンしたと聞いてやってきたとのこと。おそるべしクチコミの力。
 
◆京都店の頃とくらべて充実のメニュー。京都では険しかった店主(瀬口さん)の表情も、どうかしたのかというくらい明るくて驚きました。
 
◆豚コクラーメン。めちゃくちゃに美味い。スープもチャーシューも、こだわりを通り越した偏執的なコクにあふれるのは京都店の頃から同じ。
 
◆濃厚つけ麺。ここまでくるともう、世界の珍味に分類されるような旨さです。一口食べたとたん、5分後には食べ終えることが頭をよぎって、とても物悲しくなりました。

 

11月11日(木曜) 深夜

 先日、京都・有次の包丁を買って以来、なんでもいいからシャッシャ、シャッシャ切りまくりたい気持ちを持て余してまして。

 そんなわけで、最近の夕食はもっぱら、まず千切りキャベツありきです。千切りキャベツに合うメニューはなにか? という観点から、日々の献立作りがスタートします。

  写真は「キャベツの千切り 和風ハンバーグ添え」です。

−−−

 関係ないですが、シイタケ栽培用の原木を何本も購入した知人の某さん。

 菌床が埋め込まれた原木に霧を吹きかけなければいけないというので、たまたま家にあったカビキラーの空容器をよく洗い、水を入れて吹きかけたところ、シイタケはいつまで経っても1本たりとも生えてこなかったそうで。

 いい話だなァと、思い出すたび勇気づけられるエピソードです。

 

11月9日(火曜) 深夜

 自宅で飲み終えた缶ビールは、いつもクシャッと潰してから捨てている。

 缶々はそのままだと重量に比して体積が大きいため、ゴミ袋一杯に入れても片腕で軽々と持ち上げられてしまう。これでは運搬の手間とゴミ袋とが勿体無いから、すこしでも体積を小さくして、一回のゴミ袋にたくさんの缶々を詰め込もうという魂胆である。

 といっても、熨斗烏賊みたいにペシャンコにしようとすると労力が大変なので、せいぜい軽く潰す程度である。「費用対効果」がもっとも高いと思われる潰し加減を、頭のどこかで考えているのかもしれない。

 しかし先日、出先の自販機で購入した缶ビールをその場で飲み干した後、ゴミ箱に捨てようといつものようにクシャッと潰たら進退窮まってしまった。自販機の傍らに置いてある空き缶ボックスの投入口は、缶々がギリギリ通る大きさに設計されているため、すこしでも潰してしまうと入らなくなってしまうんである。

 なんとか無理やり突っ込もうとするも、空き缶ボックス、缶々、いずれも思いのほか頑強で一向に埒があかない。ならば缶々をスリムに潰すのみ! とチャレンジしてみるも、これがまったく歯が立たない。しまいには破れた缶の裂断面で指を切って血がにじみ、なんでこんな目に遭わなきゃならんのだ……と、絶望的な気分でひしゃげた缶々を自分のカバンにおさめるしかなかったのでした。

 空き缶ボックス様、せめてあと1センチだけ投入口を大きくしてくださいますでしょうかと、今日も神様にお祈りしています。

 

11月8日(月曜) 深夜

 本日のパイロン。

 なぜビニール袋が執拗に巻きつけてあるのか微塵も分かりません。一瞬、芸術かと思いました。

−−−

 知人の祖母の物忘れが最近ひどく、周囲から心配されているらしい。

 ただ、当の祖母本人にはまったく病識がなく、自分はいたって健康でしっかりしていると思っているからたちが悪いとのこと。

 たとえば先日なんかは、いつも使っているゴム手袋が見当たらないと騒ぎ始めた挙句、「ウチにどろぼうが入ったんや!!」と決めつけて、警察を呼ぶ寸前までいったらしい。さいわい家族が気づいて制止し、一緒に探したところ、納戸に仕舞い込まれていたゴム手袋が見つかって事なきを得たんだとかで。

 一戸建ての家に侵入してゴム手袋だけ盗っていくどろぼうが一体どこにおるねん!? という話なのだが、こういう現実判断ができなくなっていることも含めて心配ということなのだろう。

 かくいうぼくもこの前、買ったばかりのアルコールチェッカー(吐息のアルコール濃度を測るやつ。三千円くらい)が見つからず、もしかしてどろぼう…と一瞬考えてしまったクチなんですが。

 ま、こういう「物盗られ妄想」は、問題が自分の能力低下にあることを否認してなけなしのプライドを守ろうとする、精一杯の防衛機制ということでひとつ。

 

11月5日(金曜) 深夜

 これまた遅ればせながら、淡路島にある巨大観音「世界平和大観音」に行ってまいりました。

 この観音さま、奥内さんという実業家のかたが1982年に宗教法人ではなく個人的に建立したんだとか。で、奥内さんとその妻氏が他界されると相続者がいなくなり、2006年に閉鎖。困った地元の人たちが公的に処分してほしいと願い出るも、解体作業に数億円がかかるというので却下され、やむなく競売に出されるも当然のことながら入札されるわけがない。おまけに脆弱な建築物であるため急速に老朽化が進みつつあり、周囲に暮らす人々は日々、倒壊の危険におびえながら過ごしておられるらしい。

 地元の人たちの心情を考えると面白半分に足を運べるわけもなく、仕方ないので真摯な気持ちにて。

◆全長100メートルの巨大観音さま。この唐突さと周囲にまったく馴染まない違和感がたまりません。
 
◆国道28号線に出ると、観音さまがグングン近づいてきます。首まわりを覆う展望台フェンスがギブスみたいなので「ムチウチ観音」とも呼ばれるようです。
 
◆国道沿いに入場門が残っていました。観音さまなのに「本日定休日」。今後もパーマネント定休日。
 
◆閉鎖されていた入り口を無理やり入って登ってみたら、こんな見事な荒れ放題。
◆正門。封鎖されていると聞いていたけれど、心無い先達によって扉が破られてました。正門前にある巨大な賽銭箱だけ健在なのが涙を誘います。
 
◆心無い先達に憤慨と感謝をしながら、建造物のなかに足を進める。ほとんど何ひとつ撤去されていないのが逆に物悲しい。
 
 
◆事務所もご覧のとおり。本当にしょんぼりした気分になってきたので、あわてて部屋を出て帰途につきました。
 
 

 

11月4日(木曜) 深夜

 遅ればせながら、淡路島は立川水仙郷にある「ナゾのパラダイス」に行ってまいりました。

◆全長3,911mで世界最長の吊り橋、明石海峡大橋。立派なものを作ったものだなァと、いつも思います。
 
◆でも到着地は、こんなひなびた「ナゾのパラダイス」。どうでもいいですが「トイレ」の字が大きすぎです。
 
◆1989年に探偵ナイトスクープで紹介されて以来、放っておいてもボチボチ客が来るようになったようで。
 
◆創始者、兼、管理人のおじさん。橋の下で寝ておられても違和感のないような、素敵な雰囲気の殿方でした。
◆入場料500円を払って足を踏み入れたら、まず展示されていたのがコレ。身も蓋もありません。
 
◆陰毛でわかる性感度占い。それにしても秘法館系なのに写真撮影全面オーケーなのが驚きます。
 
◆ただ単にエロ本が展示してあるだけの一角も。これで客が喜ぶと思っているセンスがいかんとも…。
 
◆そういや昭和時代の本には、クンニリングスのことをカリニンガスと表記しているものもありました。
◆90歳の老婆が作って寄贈されたという、ちょっぴりエッチなワラ人形。最高に気持ち悪くてクラクラします。
 
◆ぼくの場合、あと「ももひき」さえ穿けば、若い女にもてない三大要素をコンプリートできます。
◆そうか。「スポツ」のできる男性でないから、当方いつまでも結婚できないのか。スポツできたい!!
 
◆どうやら素でペニスをベニスと勘違いしておられるようで。
◆女性の皆さん、あなたがたはバカ話のあとにマジメな顔でほめられただけで心が傾くらしいですよ。
 
◆黄色い洋服やアクセサリーは欲求不満の現われと考えていいんですね。
◆誰が決めたんでしょうかねえ。あと、これが男性のいくときの声だったら愉快そうです。「いや、いや!」ピュッ。
 
◆この人、きっと「ティスコ」には行ったことなどないと思います。ぼくも行ったことないですけど。
 
◆不平を言ったり落ちたり盗まれたりする金玉のほうがよほど不思議だと思います。
 
◆あまりにもかわいそうな狸たち。自分の死後、こんな風に展示されるのだけはさすがにお断りしたい。 ◆そして最後には、なぜかつぶらな瞳をした鹿が。端休めみたいなもんでしょうか。

 

11月1日(月曜) 深夜

 あまりにも身につまされて、骨身にしみるオモシロさだった一冊。

 

 先日も外でウイスキー12杯くらい飲んで帰ってから、グデングデンになりながらこの本を読んでたんですが、翌日にはほとんど記憶が残っておらず、もう一度楽しく読むことができたので得しました。酔って『酔って記憶をなくします』を読んだ記憶をなくします。

 ぼくなどは週末になるとほぼ毎週、酔っ払って記憶をなくしておるわけですが、後から聞くとほんとうに小っ恥ずかしいことばかりやらかしている自分に愛想を尽かすばかりです。

 もう、なるべく飲み過ぎないようにしよう、という誓いはこれまでの半生で数百回はしてますが、飲むと誓いを忘れてしまうのが難しいところです。


2010年10月のプチ日記

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