2003年4月のプチ日記

4月30日(水曜) 深夜

 朝の通勤でいつも同じ電車になる同僚がいる。

 同僚といっても他部署の人なので、社内で会話を交わすのはごくたまにという程度である。要するに極めて中途半端な知り合いなわけで、社外で会っても口は利かない。うっかり挨拶して会話にでもなったら恐ろしく気まずいことになってしまう。「気まずいからこのへんで失礼します!」と笑顔で言えたらいいのだが、小心者のぼくにはそれも無理である。

 というわけで今までは、お互いうまく車両の前後に分かれて座っていた。それで平和に通勤できていた。

 だが今朝は事態が一変した。…なんて書くと自分でも大げさなのだが、二人とも最寄り駅を寝過ごしてしまったんである。ハッと目が覚めたときには電車は駅を出ていて、あわてて周囲を見わたすと、車両の端にいた同僚も同じく焦った顔つきでキョロキョロしていた。そして目が合った。

 当然ながら次の駅で二人とも下車し、そろって向かいのプラットホームに移動したわけですが。

 遅刻しそうなので、どうしても最寄り駅の改札付近で逆行電車を待つことになる。気まずい仲なので声はかけないが、相手がソワソワしているのはお互い痛いほどよく分かる。極限状態にあっても気まずさはいつもと変わらない、という妙な状況が緊迫感に拍車をかける。うわー助けてくれ!!

 結局ぼくらは、最寄り駅を下車した後、微妙な距離をとりながら会社まで猛ダッシュしたのでした。

 

4月29日(火曜) 夜

 綾小路きみまろに顔が似ているSさんという人が職場にいる。

 外見はほぼ同じと言っていいのだが、唯一の違いは、Sさんは一切ギャグを言わない点である。

 「ギャグを言わない綾小路きみまろ」 

 これは綾小路氏本人よりいいのか悪いのか、微妙すぎてぼくにはよく分かりません。

−−−

 というか実は、綾小路氏のことはあまり詳しく知らないんですが。

 あれでしょうか。「新婚当時、明かり消してと妻が照れたが、今では夫が、頼むから消してくれと〜」てなノリのやつでしょうか。ぼくの勝手なイメージなので違うかもしれませんが、まァだいたいこんな感じのやつではないかと。

 そういや氏は、サラリーマン川柳のフレーズを無断で使ったかなにかで謝罪してらっしゃいましたですな。

 思えばぼくも、知らない間に他の人のネタを口にしていることがある。

 エッセイ集なんかで昔読んだネタを自分では忘れていて、でも意識下では心のどこかに残っていて、あるときそれを自分が考えついたものだと勘違いして喋ってしまうんである。で、たいていは「それって○○の本に書いてあったことだろ」とか指摘されて恥をかく。

 でもパクってると思われて少し嬉しい。物忘れがどんどん進んでいることがバレるよりはずっといい。

 

4月27日(日曜) 夜

 数ヶ月ぶりに国道9号線を自転車で走っていたら、こんな店が出現していた。

 釜飯と焼き鳥の店「とりでん」とのこと。それはいいのだが、新規オープンなのに妙な既視感があるのはなぜだろう。

 …としばらく立ち止まって考えていたら、ふと思い出した。ここは少し前まで大手チェーンのスキーショップ(アルペンだったかコージツだったか)が入っていて、スキー板を模した巨大な看板が目印だったんである。

 で、写真を見るとお分かりいただけると思うが、巨大スキー板オブジェは新規オープンした「とりでん」にそのまま流用されているのだった。ただ黒く塗りつぶしただけで形はモロそのまんま。

 改装にあたってオブジェを取り壊すには出費が痛かったのだろう。だったらそのまま利用すれば巨大看板になるし一石二鳥やんけ! …とまァ、このような経緯があったものと推測される。たしかに気持ちはよく分かるんですが。

 「釜飯と焼き鳥の店」にこの巨大オブジェという取り合わせは、どう考えても違和感ありすぎじゃないでしょうか。事情を知っている人ならハハーンと鼻で笑って済ませられるだろうけど、通りすがりの客はどう思うんだろう。だって黒いスキー板なんだし。

 他人事ながら心配になってきて、この写真を知人に見せてみたところ、やはり突拍子もない答えが返ってきた。

 「焼き鳥屋だけに、カラスが上向いてくちばしを広げてるところじゃないのかなァ」

 とりでんさん、貴店はカラスが上を向いてる巨大オブジェを出してるんだと思われてますよ!! こんな焼き鳥屋はイヤだ。

 

4月26日(土曜) 深夜

 職場の上司に40歳くらいの女性がおるわけですが。

 彼女は新入社員のファッションに対して手厳しいことで知られている。たとえばジーンズにパーカー姿の女の子を見ては「工夫がないね」と一蹴し、ベージュ系でまとめている人を見ては「地味ね」と一蹴する。そして最後は決まって「どうしてあんなにセンスないんやろね」と締めくくるのである。うわー辛口。

 ただ、その女性のファッションはいつも、真っ赤とか黒とかいった原色の「ボディコン」スーツでいらっしゃるのでした。ファッションに疎いぼくの目から見てもちょっとマズいんじゃないかと思うような、時代を15年くらい逆行している個性的なスタイル。

 若い人からは「どうしてああいうセンスなんだろうね」と陰口をたたかれていることなど、ご本人は露も知らない。そして毎日、新入社員のファッションを「辛口採点」し続けているのである。

 若い社員たちは皆、彼女にファッションを褒められたらどうしようと戦々恐々で過ごしている。

 ちなみにぼくは一度、「名倉さんのファッションはいつも無難ね」と言われたことがあります。うーむ微妙。

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 さて本日、某企業の連載コラムが更新されてます。

 今回のテーマは「いまどきの京フライ」。個人的にフライものの料理が好きなので、今回はいろんな食材を使ってフライ料理を作ってみました。ここで作ったフライがその日の夕食だったんですが、おかげで少し体重が減りました。フライなのに。

 よろしければご覧いただけると嬉しいです。

 

4月24日(木曜) 深夜

 中華料理が好きなので自分でもたまに作るのだが、問題は食材の値段の高さである。

 たとえばシイタケは1パック200円くらいするし、ネギだっていいものは200円くらいする。中華料理に欠かせないニンニクにいたっては、一房で100円もするありさま。うわー。

 ただ、この値段は国産品の話であって、中国産だと半額くらいの値段で売られている。農薬もたくさん使ってあるという噂もあり、安いうえに贅沢な感じがして頼もしい。

 というわけで、たいていは中国産のものを買っているわけです。本場中国の食材を使っているぼくは、きっと「本物志向」なのだろう。

 ちなみに今見たら、シャツやズボンも中国製でした。食材のみならず服装も本場中国製。我ながらすごい。

 

4月23日(水曜) 深夜

 おでん屋で飲んでました。おでんは平和でいい。

 ただ、来客の中に「マイ七味」を持参している人がいたので驚いた。何をしでかすのかと思えば、「いつもフレッシュな七味を持ち歩いてるんですよ。このほうが料理が引き立つでしょ」とのこと。

 これってアリなんだろうか。

 おでん屋の主人は不機嫌になっておられたが、今回は七味だったからまだ幸いである。もしかしたら「マイおでん」を持参して、いやァ美味しいねェなんて言う客が現れるかもしれないんである。

 マイ七味を許すと大変なことになる。しまいには、うなぎ屋に「マイうなぎ」を持参する輩も出現することだろう。

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 ところで、飲食店の持ち込みってどこまでOKなんでしょうね。

 小生などはデザートにガムを食べるのも躊躇されるんですが、罪悪感が邪魔して、ついつい口にしてしまいます。

 このガムが妙に美味しいんだ。 実はそのために持参してるよ母さん!

 

4月22日(火曜) 深夜

 すごい下痢をした。ビロウな話で申し訳ないが、昨夜食べたシメジなんかがそのまま出てきた。

 布団をかぶらず居眠りしたせいで寝冷えしたような気がする。この分だと栄養もほとんど吸収されていないだろう。

 そういや下剤を飲んでダイエットしてる人もいるらしいが、薬に頼るのはよくない。これからは寝冷えである。女性雑誌でも是非とりあげてほしいと思う。

 「この夏、寝冷えでダイエット! 寝冷え特集」

 痩せてる女性を見るたびに、シメジとかそのまま出してらっしゃるところを想像してしまう昨今であります。

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 ここ数ヶ月、平日は発泡酒の350ml缶2本にとどめている。

 ぼくの唯一にして最大の自慢である。これって結構、本気で偉いんじゃなかろうか。

 …てな話を友人にしたところ、「オレは週に1〜2回しか飲まないよ」とあっさり言われてしまいました。むっかー。

 おまえとはベースが違うんだよ莫迦。おまえのほうがベースが偉いんだよ莫迦。

 でも強姦の常習犯にとっては、週に一度しか強姦しなかったというのが「偉い」のかもしれませんな。「今週は我ながら自律できたよなァ」なんてって。

 自分を褒めたい状況も人それぞれであります。

 

4月21日(月曜) 深夜

 久しぶりに「今日の広辞苑」をひとつ。

【うなうな】  「うな」と言いながらおどし叱ること。 浮世風呂前「憎いおつかあだの、うなうなをしてやらう」。

 おどし叱るときは「うなうな」と言うのが効果的、かつ正しい文法のようである。脅し文句も下手すると馬鹿の一つ覚えになってしまいがちな昨今、関係者のみなさんはぜひ使ってみる価値があるかもしれません。

暴力団員が:「…貸した金、返せへんっちゅうのかオラァ! 事故死して保険金で払えや うなうなァ!」

銀行強盗が:「ウナウナ! カネヲダセ ハヤク シナイト コイツ コロス! ウナウナ!」

脅迫犯が:「貴殿の不倫写真を入手しました。ばらされたくなければ二千万円振り込んで下さい。うなうな」

 これによって二人とも平和な気分になって、お金のことなどどうでもよくなってしまっても、ぼくは知りませんので。うなうな。

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 関係ないけど、「うとんじる」(疎んじる)と「うどんじる」(ウドン汁)って似てますね。一文字違い。

 いざというとき間違えないよう気をつけたいものです。

 

4月20日(日曜) 深夜

 週末は風呂に入るのが面倒になる。

 平日だと翌日に仕事が控えており、いろんな人に会うんだと思うと風呂に入る気にもなるのだが、週末だと「誰にも会わないからまあいいか」となってしまうんである。それに自分の体臭ってけっこう好きだし。

 ただ、入浴をさぼると、体がベタついて不愉快だという問題が生じる。

 そこで考案したのが「3点洗浄法」である。顔面と手のひら、足の裏の3点を石鹸で洗えば、あたかも入浴したかのような感覚になるのだ(それ以外は肌が洋服に覆われているので自分でもよく感知できない)。

 省エネのためにも是非世の中に広めたい入浴法であります。今日は湿気が多かったので、もうエアコンのドライ使ったけど。

 

4月19日(土曜) 深夜

 昨日は知人宅でパーティー(飲み会)があったので更新できませんでした。

 パーティーの席では、メインディッシュとして「こつぶっこ」が振舞われたわけです(小さい粒々のあられ。亀田製菓)。それは大変嬉しかったのだが、問題は半月前に開封されたものなので、ずいぶんと湿気てヘナヘナになっていることだった。はっきり言ってかなり不味い。

 これではせっかくのパーティーが台無しじゃないか。

 …と参加者の全員が危惧し始めたとき、B君が妙案を出したのだった。湿気たあられを電子レンジでチンすれば、カラッと元通りの状態に戻るというのだ。おおすごい!(どうせ伊藤家の食卓とかで仕入れた小技だろうけど)

 だが、実際にやってみたのところ、ぼくが食べたやつはどれも湿気たままだった。心底がっかりである。

 ただ、ほかの人が食べた中には、ちゃんとカラッとなってるのもあるらしかった。ぼくも乾いてそうな粒を選んで食べてみるのだが、なぜかどれも湿気ている。よく観察していると、どうやらS君が選んでいる粒に「当たり」が多いようだった。畜生! うらましい! 

 そこで恥を忍んでS君にお願いしてしまったのでした。「もしカラッとしてるのがあったらオレにちょうだいよ」。

 そしたら「食ってみなきゃ分からねえよ」と返されてしまいました。ひょっとして馬鹿ですかぼくは。

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 さて本日、某企業の連載コラムが更新されてます。

 今回のテーマは「いまどきの京友禅」。京都の伝統的な染色技法である「友禅染め」を実際に体験してきたレポートです。たまには真っ当に京都の文化を紹介してみました。

 よろしければご覧いただけると嬉しいです。

 

 

4月17日(木曜) 深夜

 夜景が好きだという人がたまにいる。夜の市街地に輝く無数の光。

 でもその光ってビルの灯かりとかだろう。残業してる事務所の蛍光灯であったり、トイレの電気だったり。「キレイだね…」なんて遠い目をしてても、その遠くにあるのは、うんこやおしっこを照らすトイレの光かもしれないんである。ヘンタイですよこれは。

 なんてことを悔し紛れに書いてみるサースデイナイト。

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 ところで最近気になってるのが、メールソフトの削除アイコンである。

 

 血糊を連想させるような荒々しい筆致。この敵意と怒りに満ちあふれた生々しいマークはなんなのだ。アメリカ人はメールを削除するにも、世の憎しみを一身にこめてボタンを押しているのか。

 ちなみにぼくは、アダルトサイトからのスパムなどが届くたびに「もったいないのう」と思いながら、名残惜しく削除しております。

 

 <突然すみません。無断リンクです。この銅像の存在は知ってたけどシリーズで見るとおもしろいですねえ>

 

4月15日(水曜) 夜

 同僚から本を借りて読んでおるわけですが。

 ぼくは本の扱いかたが雑なので、読んでるうちにいつも表紙(カバー)がボロボロになってしまう。これが自分の本なら全然構わないのだが、借りてるものだと返すときにかなり気まずいことになる。今までに何度も経験した。

たとえばこんな具合

 そこで今回こそはと思い立ち、表紙を外してむき出しの状態で読むことにした。こうすればいくらキズがついても大丈夫。返すときにキレイな表紙をかぶせればいいんである。おお素晴らしい!

 …と頼もしい気分で読んでいたのだが、おかげでつい油断していたのだろう。これを持ち主に見られてしまった。

 「それって私が貸した本だよね。なんで表紙外してるわけ?」

 咄嗟のことに動揺してしまい、「いやその、表紙にキズとか付いたら申し訳ないと思って…」と正直に答えたのが一層マズかった。一見相手に配慮しているような物言いだけど、そうじゃないことは誰にでも分かる。地獄の気まずさである。

 結局ぼくは、自分がどう思われるかを気にしてるだけで、相手のことなどちっとも気にしてないのでした。テヘッ。

 

4月15日(火曜) 深夜

 スーパーの鮮魚コーナーをうろついていたら、店員に馬鹿でかい声をかけられた。

 「よこわのお刺身、安いよー! まぐろの赤ちゃんね! プリップリの赤ちゃんの切り身、二本入って480円ッ!」

 「プリップリの赤ちゃんの切り身」という言葉に負けて買っちゃいました。

 赤ちゃんだと思うと余計に美味しゅうございました。おいちいでちゅねー赤ちゃん。

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 あまり関係ないが、最近出産したXさん(仮名です)という知人がいる。

 先日、赤ちゃんを見せてもらったのだが、あまりの陰気臭い雰囲気にびっくりした。赤ちゃんといえば笑顔でバブー、というイメージを抱いていたのだが、そんなものは微塵も感じらない。ずっと伏せ目がちで眉間にしわを寄せたままという、アクション劇画のような表情だったのだ。

 ちなみに母親のXさんも非常に陰気臭い女性である。やはり血は争えないということか。

 言葉に窮したぼくが「お母さん似だねー」とコメントすると、Xさんは陰気な笑みを浮かべてました。

 

4月14日(月曜) 深夜

 キツいことを歯に衣着せず口にするS君という知人がいる。

 ぼくも彼にはいろいろ指摘されている。「名倉ってファッションセンスださいよな」とか「カラオケ下手くそだなあ」とか。いや、これなどはまだいいほうで、先日は「おまえいつも挙動がぎこちないぜ」とまで言われた。むかー、自分でも気にしてるのに!!

 というわけで真剣に落ち込んでいたところ、さすがのS君も気づいたのか、慰めの言葉をかけてくれたのでした。

 「いや、だからさァ。ほんとにヤバいと思ってたら俺も指摘できないって」

 彼が言うにはこういうことだ。たとえばファッションセンスのダサさにも段階がある。それが特殊学級系のヤバさだったら、恐ろしくてとても口にできない。その点名倉のファッションは、ダサいとしても本当に痛々しいレベルじゃないから、こうやって指摘できるんだというわけである。

 「だからそんなにまじめに落ち込まなくてもいいんだって」

 なーんだ、そうだったか。やったー!! いいこと言うじゃねえかS君!!

 …と手離しに喜んでいたわけですが(これはこれでどうかと思うけど)。

 よく考えたら彼は「ほんとにヤバいこと」は言っていないのだ。言われていないことは山ほどある。

 これらはきっと「本当にマズいレベル」に達しているから、さすがのS君も指摘できずにいるんだろう。

 今後S君が全然悪口を言わなくなったら、ぼくはもう終わりである。ああ、頼むからぼくの全てをけなしてくれ。

 

4月13日(日曜) 夜

 以前見た映画のワンシーンにこんなのがあった。

ップルが大げんかして険悪な雰囲気になり、別れ話にまで発展してしまった。だがここで男がものすごく面白いギャグを言い、女も思わず大笑いする。ケンカしているのが莫迦らしくなってきた二人は、そのままめでたく仲直りしたのでした。 

 笑いは人生の潤滑油というわけである。畜生おもしろくない。笑いなんてクソ食らえだ。

 だが実はぼくにも似たような経験がある。

 小学生の頃、おやつの奪い合いを発端として妹と大げんかになったことがあった(親がいないのをいいことにぼくが独り占めしようとした)。それでも強引におやつを食べつくしたところ、妹は火がついたように泣き叫び始めた。

 困りったぼくは、険悪な雰囲気を笑いによって和まそうとした。腕力で勝っているのをいいことに、号泣する妹のわき腹を思い切りくすぐったんである。「ウウッ、ウワーン、ウワーン!! ウワー …ギャハハハッ!!」。

 あまりに理不尽な仕打ちをうけた妹はいっそう激しく泣きわめき始めたのだが、再びくすぐられると思わずギャハハと大笑いしてしまうのだった。これが何度も何度も繰り返された結果、妹は全くぼくに近寄らなくなってしまった。

 やっぱり笑いって素晴らしいですね。

 みなさんも別れ話なんかの際は、相手をくすぐって笑いをとってみてください。きっと悔いがなくなると思います。

 

4月12日(土曜) 深夜

 知人がコタツを片付けたと言っていた。まだ4月なのに、なんて暑がりなんだ。

 これにひきかえ、ぼくの家族はみな寒がりだった。だから実家に住んでいた頃は、6月下旬くらいまで居間に堂々とコタツがセットされていた。もちろん、電熱器も毛布もそのままにである。6月に入っても「万一寒くなったらどうしよう」という思いがあるので、毛布を片付ける勇気が誰も出なかったのだ。

 いや、実際はここまで意識化していたわけではなく、無意識下でなんとなくコタツが出しっぱなしになっていたような気がする。そしていよいよ7月に差しかかろうかというある日、家族の誰かがふと気がつくのだった。

 「いやー暑くなったねェ。半袖でも汗ばむわ」
 「ほんまやねェ。そろそろ冷房の季節ね」
 「うんうん。…ん? このコタツ、なんで今ごろまで毛布かけてあるんだ!?」
 「うわ、ほんまや!」

 一家そろって毛布に足を突っ込みながら「暑くなったねェ」なんて言ってたわけである。バカ一家。

 ところで、電源が入っていないコタツに入ると、夏場でもひんやり涼しい気がするのはなぜだろう。動いてないエスカレーターを歩いて昇ると妙に遅い感じがするのと似たようなものか。

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 さて本日、某企業の連載コラムが更新されてます。

 今回のテーマは「いまどきの京浄水(野外編)」。先週使用したサバイバル浄水ストローを野外に持ち出し、いろんなものを飲んでみました。ちなみに先週のコラムについては、「引いてしまいました」「気持ち悪いです」「痛々しいです」といった好意的なご意見を賜っております。ありがとうございます。

 よろしければご覧いただけると嬉しいです。

 

4月10日(木曜) 夜

 昨日テレビを見ていたら、菊川怜嬢がこんなことをおっしゃっていた。

 「私ケチなんですよ。タクシーとかも少し手前で降りるし。心理的なものっていうか」

 ケチなのは心理的なものですか。心理的なもの。そうじゃないものってあるんだろうか。

「私ケーキが好きなんですよ。心理的なものっていうか」
「昨日は風呂に入らなかったんですよ。心理的なものっていうか」
「オナニーにはピンクローター使ってるんです。心理的なものっていうか」

 なんにでも当てはまるという点では「しょせんは自己満足ですけど」に似てますな。

 実はぼくも最近ずっと便秘気味でして。心理的なものっていうか。しょせんは自己満足なんですけど。

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 全然関係ないが、後輩と一緒に会議に出ることになった。

 だがその後輩は、会議に持参すべき書類を机の奥底にしまいこんでいたらしく。

 「あー探すの面倒だなァ。書類、忘れていこうっと」

 それは「忘れ」るじゃなく「持っていくのをやめ」るだと思います。以上。

 

4月9日(水曜) 深夜

 すっかり暖かくなりましたね。

 あちらこちらで咲きほこる桜の木々がぼくの心を癒してくれる。満開の桜もすばらしいが、ちらほらと散りゆく花もまた趣があっていいものだ。漢詩に「花に嵐のたとえもあるさ」との訳を詠んだのは井伏鱒二だったろうか。

 今朝も駅ホームの片隅にて、吹き溜まった桜花に心打たれたのであった。

 なにやら不自然な形に固まっているうえ、中央部分には足を滑らせた跡。これが何なのかはすぐに分かった。

  1. 何者かがホームの片隅にゲロを吐いた
  2. 生乾きのゲロの上に桜花が大量に降った
  3. 風が吹き、ゲロの上の花だけが残った
  4. そんなことなど露知らぬ歩行者が花を踏んでニュルリ!

 ゲロがそのまま見えていれば踏んで滑ることなどまずなかっただろうが、なにしろ桜の花である。「お、いいね。ちょいと上を歩いてみるか…」なんてって踏んだ瞬間、予想外の結末を迎えたのだろう。ひょっとすると転倒して骨折などなさっているかもしれない。

 花の下にはゲロがある。やっぱりさよならだけが人生かもなァ、と思わされた一時でした。

 桜の花を前にすると誰しも詩人になる。

 

4月8日(火曜) 夜

 「ネットオークションに出していた靴が高くで売れたの!」と同僚の女性が喜んでいた。

 なんでも何度か履いた中古のハイヒールなのに4千円で落札されたらしい(ちなみに原価は1万円弱)。自分の足に合うかどうかも分からない使いさしの靴に、よくこんな値段を出せるものだと、喜びながらも不思議がっておられたわけですが。

 それって足フェチとかハイヒールフェチとかの男性が買ってるんじゃないでしょうかねえ。毎晩クンクン嗅ぎながら、ときには股ぐらに押しつけながら、オナニーぶっこいてるんじゃないですかねえ。

 ぼくはいい人なので、本人には言いませんけどね。

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 また別の同僚は、携帯の着メロに「ザーッ」という水の音を設定している。

 川のせせらぎで心癒される着メロ、というつもりらしいが、どう聞いても音姫の音にそっくりなのだ。携帯が鳴るたびに水洗トイレを流す音がザーッ。さてはトイレでも、ポータブル音姫として利用しているんだろうか。

 どうせならおならの音を着メロにすればいいのにと思う。携帯が鳴るたびにブーッ、ブーッ、プッ。これなら本物のおならをしても、携帯電話のせいにできるから都合がいい。臭いでバレるというなら、オナラ臭のにおいストラップを併用すればいい。

 ブーッと盛大な音がした後、えもいわれぬスメルが周囲を漂う。

 これだと単に「いつもおならばかりしている人」と思われておしまい、かもしれませんが。

 

4月7日(月曜) 深夜

 いまどきこんなコトいうのも恥ずかしいのだが、ぼくは「サブ好き」な傾向がある。

 といってもホモ雑誌の「さぶ」ではなく、メインに対するサブである(ほらよく、サブカルチャーとか言ってる人がおりますでしょ)。

 ちなみにぼくも、メインカルチャーよりはサブカルチャーのほうが好きなのだが、これにはちゃんと理由がある。なんとなれば、メインカルチャーは量が多いので知ったかぶりするのが大変だけれど、サブカルチャーはメインより量が少ないうえ、知っている人が少ない。だからちょこっとかじるだけで「通」のふりができる。面倒くさがりなくせに見栄っ張りなぼくにとっては、これがたまらない魅力なんである。

 それにメインカルチャーには「自分を高める」とか「教養をつける」みたいな雰囲気があって、それだけで手をつけるのがおっくうになってしまう。その点、サブカルチャーには後ろめたさがあるので、比較的手を出しやすいというメリットがあるのだ。

 ひと昔前の言葉なら「アングラ志向」ということになるだろうか(それにしては恐ろしく中途半端だけど)。

 同様の理由で、子どもの頃から主教科(メイン)よりも副教科(サブ)のほうが好きだったのを思い出す。国語や算数は勉強する内容が多いが、保健体育や家庭科、図工といった教科なら少しがんばれば得意教科になれるんである。

 とりわけ好きだったのが家庭科の調理実習だった。だれも真剣にやらないから、ちょっとがんばれば皆を出し抜ける。おまけに作ってると妙に楽しい。さらに「こんなことやっても入試に全然役立たない」という後ろめたさが追い風となり、とにかく猛烈にがんばったのだった。考えようによっちゃあガリ勉である。

 当時の妙ながんばりもあって、料理を作るのは今でもかなり好きである。「アングラ志向」「アンチ・メインストリーム」が気がつけば妙に家庭的なことになっている。

 寺山修司は天井桟敷を主宰したし、カートコバーンはオルタナ音楽やって自殺した。そしてぼくは毎晩ご飯を作る。

 

4月6日(日曜) 深夜

 兵庫県西脇市は「日本のへそ」として知られているらしい。うーむ。

 西脇市のみが特別扱いされていることに憤りを感じているわけではない。それよりも、へそだけが特別扱いされていることに開いた口がふさがらないのである。なんてひどいんだ。

 へそがあるなら、もっとほかの部分も大切にすべきではあるまいか。

 めでたくこれらに選ばれた街は光栄だろう。「我が宮崎市はこの度、めでたく『日本の陰嚢』の称号を得る運びとなりました!」なんて知事がスピーチして。

 ちなみに「日本の乳首」は富士山ってことになってるみたいですね。今後、垂れてこないことを祈るばかりです。

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 さて昨日、某企業の連載コラムが更新されてます。

 今回のテーマは「いまどきの京浄水(室内編)」。サバイバルグッズの浄水ストローを使って、いろんな飲み物を浄水してみたレポートです。今回また、人間としてなにかを失ったような気がします。ああ、失うものが減っていって嬉しい。

 よろしければご覧いただけると嬉しいです。

 

4月4日(金曜) 夜

 職場の廊下を歩いていたら突然、口の中に特大サイズの痰が出てきた。にゅるっ。

 少量なら飲み込んで「出なかったこと」にするのだが、こうもデカいとさすがに気が引ける。そこで最寄のトイレで吐き出そうと早足で歩いておったわけですが。

 間の悪いことに、途中で上司にバッタリ出くわしてしまった。「おつかれさん!」と声をかけてくる上司。当然ながらこっちは「おつかれさまです!」と挨拶しなくちゃいけないのだが、ぼくの口の中は痰でいっぱいなのだ。うわ、どうするよ。

 しかし習慣とは恐いもので、つい反射的に声を出してしまったのでした。

 「おつか〜(ドロリ)…あ、あう、ジュルル」。

 珍獣を見るような上司の表情が今でも頭から離れません。

−−−

 というわけで、少しでも気分を紛らそうと自殺に関する本を読んでいたところ。

 自殺の危険がある患者を診察する精神科医は"MA'S SALAD"(ママのサラダ)と呼ばれる項目を尋ねるべきだ、という話が載っていた。聞き漏らしてはならない情報の頭文字をとって、語呂合わせで覚えやすくしているのだ。

 ちなみにそれぞれの具体的な項目は、

 それは別にいいのだが(性別を尋ねるというのもやや失礼だとは思うけど)、問題は別のところにある。

 たとえば重度のノイローゼに陥ったあげく、自殺未遂を起こして病院に運び込まれた患者がいたとしよう。で、一命をとりとめた後に診察が行われるのだが、そこで医師の頭の中には「ママのサラダ」が渦巻いているのだ。

医師:「命すら危ないところでした」
患者:「…助けられたんですね私」
医師:「もう大丈夫ですよ。しかし、死を考えるほど思い詰めていたんですか…」
患者:「実は…、ウッ、ウウッ…(落涙)」
医師:「さぞかし辛いことがあったんでしょうね」
患者:「ええ、もう死ぬしかないと思ったんです」
医師:「……」(えーと、ママのサラダ、ママのサラダ…)

 生と死の瀬戸際に決まって登場するママのサラダ。これじゃあ恐ろしくて、おちおち自殺未遂もできませんな。

 

4月3日(木曜) 夜

 よく見かける女性の捨てゼリフに「カラダ目当てだったのね!」というのがある。

 よりリアルに表現するなら「ボデー目当てだったのね!」とでもなるんだろうけれど、こういう風なセリフはあまりないようだ。

 それはさておき、カラダ目当て。貧相なボデーしか持っていないぼくとしては、異性からこんなこと言われたら嬉しい限りなのだが、世の女性たちはそうでもないらしい。「私の内面を好きになってほしいの!」てなことなのだろう。よく知らないけど。

 とすると、「君のカラダは反吐が出そうなほど嫌いだけど、君のこと愛してるんだ!」というのが、彼女たちにとって理想の愛なのだと推測される。

 いやいや、こんなワケはないのでありまして。「カラダ目当てだったのね!」=「自分のカラダを嫌いになって」ではない。この言葉の真意は、「カラダは求めてくれていいけれど、それ以上に『内面』を好きになってほしいの!」てなことなのだろう。

 だけど、内面を好かれるというのもどうだろうと思う。そのうち愛が冷めてきたら、また違った視点からの発言が出てきかねない。

「けっきょく、私の性格目当てだったのね…」

 ここで慌てて「いや君のボデーだって好きさ!」なんて言ってもきっと無駄である。「じゃあ私の性格とボデーだけが目当てだったのね!」と激高されるのがオチだからだ。

 こうして人は、相手になにを求められたいのか、自分でもワケが分からなくなっていくのでしょう。

 自分の存在価値を確認するために奔走してる人々の姿は、楽しいので大好きです。こんなにシンパシーを感じるものはない。

−−−

 念のために申し添えると、今日の日記は、心身二元論を茶化そうとかそういうことじゃないですので。

 ココロとカラダはどんどん激しく分けて考えたほうが、ワケが分からなくなるのでいいと思います。

 

4月2日(水曜) 夜

 風邪がまだ治りません。ちゃんと薬を飲まないのがダメなのか。

 心配になってきたので薬剤師をやってる知人に尋ねてみたところ、頼もしい答えが返ってきた。

 「かぜ薬? オレはあんなの飲まないよ」

 かぜ薬はウイルスそのものには何のダメージも与えないから、飲んだって同じことなんだとか。確かにそうかもしれないが、自分は飲まないものを客に売っているというのはどうなんだろう。「紺屋の白袴」と言えば聞こえはいいが、そうじゃないことはちょっと考えれば分かる。

 じゃあ風邪をひいたらどうすればいいのかと問うと、これまた気の抜ける答えが返ってきた。

 「よく寝るのがいいんじゃないかなァ」

 風邪のときは寝るのがいい、というのが薬剤師の結論でした。ほんとうに勉強になりました。

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 ついでに長年の疑問もぶつけてみた。「風邪のとき風呂に入るか否か」という問題である。

 すると彼はしばらく迷った末、「うーん、入りたかったら入るし、面倒だったら入らない」。

 もうどうでもよくなってきた。

 で、中間をとって「軽く入浴」してみたところ、湯冷めして余計に悪化てしまいました。…おっ、これこそが結論ではあるまいか。

 「風邪のときは、風呂に入るか入らないかのいずれかにすること」

 

4月1日(火曜) 夜

 相変わらず風邪をこじらせております。こんなにしんどいのに7度2分しかないのか。

 そういや子どもの頃、風邪気味でしんどかったとき、学校をサボりたいので体温計を蛍光灯に近づけて熱してみたことがあった。するとその瞬間、体温計が破裂して中から水銀が飛びだした。

 あわてて「体温が高すぎて割れたみたい」と親に報告したのだが、信じてもらえず激怒されたうえ、学校にもやらされてしまった。

 これに懲りて反省し、以来ぬるま湯で38度くらいに上げるようにしています。

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 先日、薬局の化粧品(口紅)コーナーで見かけた試し書き。

 リップで「うんこ」と書かれていたので、思わず写真に収めてしまいました。そのままさ加減が素晴らしいです。世の女性たちもこういうことを書いてるんですねえ。

 おまけにリップの色もうんこっぽいし。今年の春はステキなうんこ色のリップで街に出よう!!

 


   2003年3月のプチ日記 

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